社内にCFOが居ないベンチャー企業CEOで、自社のCFOを任命することを検討されている方は、どのような人物をCFOに任命するべきか、悩まれることと思います。
この記事では、CFOを選ぶ際の3つのポイントをお伝えします。
3つのポイントは
①得意不得意
②会社のフェーズ
③CEOとの相性
です。
目次
(1)CFOが管掌するファイナンス・コーポレート領域のカテゴリ
CFOが管掌するファイナンス・コーポレート領域の各機能は、以下の3つにカテゴライズされます。
①企業経営
経営陣の一角として会社の舵取り。
全社的な方針・戦略の策定や組織構築・運営、PDCAを回す、ヒト・モノ・カネの最適配分等の経営意思決定・管理監督・執行。
ファイナンス・コーポレート分野に専門性を有しながらもそれに囚われることなく広く経営マターに対応する。
②攻め
拡大・成長のために積極的な動き。
・財務企画(社外からの資金調達を行う)
・広報IR(企業価値を向上するための対外活動)
・M&A(事業拡大や資金調達のための対外活動)
等
③守り
会社が安定して機能するための土台作り。
・財務管理(安定した資金の管理)
・経理(数値情報把握のための記帳業務)
・人事総務(従業員が安心して就業できる環境づくり)
・法務(企業活動のリスクを低減するための取り組み)
等
(2)ベンチャー企業CFOの3タイプ
私は、ベンチャー企業CFOを、「企業経営」「攻め」「守り」それぞれの得意不得意によって3つのタイプに分類しています。
①アントレプレナー型
「企業経営」が得意な人。
CEOと共に経営マターに対応する役割。
主なバックグラウンドは、投資ファンド出身の方。
投資ファンドは、投資先の企業価値を上げてEXITすることがビジネスの根幹であり、ファンドから役員を派遣して投資先の経営を担うことにより企業価値を向上させる取り組みを行います。
ファンドから派遣された役員は様々な経営課題に立ち向かい解決していくことで企業価値を向上させる経験をしています。ファイナンスに強いこともさることながら、企業を経営していく経験を蓄積しているのが強みとなっている人材です。
②金融型
「攻め」が得意な人。
金融の知識と経験が豊富であり、資金調達に強みを有する。
主なバックグラウンドは、投資銀行出身の方。
投資銀行は、M&AやIPO等の金融取引のコンサルティングを行うプロフェショナルであり、これらを駆使してファイナンスを行うことについて強みを有しています。
近年外資系投資銀行出身の方がCFOを務めるベンチャー企業が大型のIPOを果たしているケースも多く見られます。
③管理型
「守り」が得意な人。
経理・財務・法務の知識と経験が豊富であり、安定した企業活動の管理に強みを有する。
主なバックグラウンドは、銀行や監査法人(公認会計士)出身の方。
金融型が比較的アグレッシブに資金調達に動く傾向にあるのに対して管理型はリスク管理を重視しつつ成長性に加えて一定の安定性も求めつつ企業のファイナンス・バックオフィスを支えることに強みを有しています。
(3)ファイナンス領域のCEOとCFOの役割分担
①アントレプレナー型
アントレプレナー型のCFOは経営マターに強みを発揮するため、CEOと共に経営を担うことが多くなります。
CEOとの分担は会社それぞれです。例えば、CEOが特定の分野(営業や開発)に強みを有し担当しそれ以外の分野をCFOが担当するというケースも一例です。
CFOが経営マターに従事する割合が多くなるため、ファイナンス・ストラテジー・コーポレートの各領域についての関わり方としては、CFOはマネジメントに傾斜して実務担当は各領域の部長やマネージャー以下のメンバーに委ねる、というケースが機能しやすいと考えます。
②金融型
金融型のCFOは、CEOとの役割分担において、攻めのファイナンスをメイン領域とします。
攻めのファイナンスやストラテジーの分野を広くカバーすることになります。
一方で守りのファイナンスやコーポレート分野は不得意分野であることもあり、実務担当として部長やマネージャー以下のメンバーに委ねるのがよいでしょう。
③管理型
管理型のCFOは、CEOとの役割分担において、守りのファイナンスをメイン領域とします。守りのファイナンスやコーポレート分野を広くカバーすることになります。
アントレプレナー型・金融型が戦略策定に強みを有する傾向にあるのに対して管理型は執行や実務能力が高いケースが多いので、攻めのファイナンスやストラテジー分野の事務担当としても機能するケースが多いと考えられます。
(4)会社のフェーズごとのCFOに求められる期待
会社のフェーズによって、主な資金調達手段は変わり、それに応じてCFOに求められる能力・特性も変わってきます。
①金融機関からのデット調達
金融機関は財務の安定性を重視することから、CFOにも守りが強いことが求められます。この場合管理型CFOのニーズが高まります。
②投資家からのエクイティ調達
投資家は安定性よりも企業価値向上という”大当たり”を期待することから、CFOにも攻めが強いことが求められます。この場合金融型CFOのニーズが高まります。
③IPOを目指す
IPOするためには上場企業としての管理体制の構築が必要になってくることから、守りが強い管理型CFOが求められます。
(5)CEOとCFOの相性
ここまで、どのようなCFOを選ぶべきかについて、「CFOに求められる役割」と「CEOとの役割分担」の観点かから考察してみましたが、それらと同じくらい、場合によってはそれ以上に大事な要素と言えるのが、CEOとCFOの相性でしょう。
適性について左脳でいくら分析したとしても、結局は「合う」「合わない」は右脳で感じ、判断することになります。
CEOは「夢を見るロマンティスト」、CFOは「冷静さと論理性をもったリアリスト」である傾向が大きいです。両者が補完関係になることもあれば話が嚙み合わないこともあります。
またベンチャー企業CEOはそのパッションで企業を成長させる存在であり強いこだわりを持っていることが多かったり、オーナーや大株主であることが多かったりすることから、言わば絶対的存在となっているケースが多いです。そのような存在であるCEOとCFOがよい関係を築いていけるかは、ロジカルな要因よりも、結局はフィーリングであるということも多いのではないかと思います。
結局人と人ですからね。
お互いが認め合い尊重できる存在であり、信頼関係を築けることがCEOとCFOの関係においても最も重要なことなのだと考えます。
(6)まとめ
ベンチャー企業CEOが自社CFOを選ぶ際の3つのポイントは、
①CFOの3類型「アントレプレナー型」「金融型」「管理型」それぞれ、「企業経営」「攻め」「守り」の得意不得意がある
②会社のフェーズごとにCFOに求められる能力・特性が変わる
③CEOとの相性:結局人と人
と考えます。
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