【事業再構築補助金】スキー場運営者の採択事例を分析

先般2021年9月2日に、事業再構築補助金の第2回採択結果発表がありました。

本記事では、スキー場運営者の採択事例(第1回と第2回で計8社)をピックアップし分析します。

(1)事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金は、新型コロナウィルスの影響を受けている中小企業・中堅企業に対して、新分野への展開や業態変換を行う取り組みについて、要する投資・費用について一定の補助を行うものです。
1社あたり最大で1億円の補助が受けられる、大型の補助金です。
総額予算1兆1,485億円といわれ、5回程度公募が予定されています。
2021年6月に第1回公募の採択発表が行われ、2021年9月2日に第2回公募の採択発表が行われました。
現在第3回の公募中であり、今年度中に第5回まで公募が行われる予定です。

(2)考察


採択された事業計画は経済産業省のホームページに公開されていますが、公表されている第1回及び第2回の採択事例のうちスキー場運営者の採択事例は8社ありました。

分析したところ、当該採択事例8社は以下の3点を示唆しています。

①グリーンシーズンの営業強化

スキー場運営事業者にとって、従来からグリーンシーズンの営業強化が大きな課題の1つであります。

多くのスキー場の営業期間は12月~3月の間の約3ヶ月間であり、残りの約9ヶ月間はオフシーズンです。
仮にグリーンシーズンの営業を行わない場合には、約3ヶ月間のウィンターシーズンの営業により、年間のコストを賄う必要があります。

かつてバブルの時代にスキー場が大賑わいだった時代にはそれは可能だったかもしれません。
しかしながらスキー人口は最盛期の年間約1,800万人から、現在は3分の1まで落ち込んでいます。ウィンターシーズンの売上だけで年間のコストを賄えなくなってきています。
そこでグリーンシーズンにいかに売上を稼ぐか、という課題の重要度が年々増しているのです。

今回スキー場運営事業者の採択事例が8件ありましたが、そのすべてがグリーンシーズンの営業の強化施策です。
8社はそれぞれ、従来からグリーンシーズンの営業強化を行ってきたか、または従来からグリーンシーズンの営業強化という課題を強く認識していた中で補助金という機会を利用していち早く施策を実行した会社ではないでしょうか。

②「事業再構築」の内容

事業再構築補助金制度の要件として、「新分野への展開や業態変換を行う取り組み」であることが求められます。
つまり、「今までやっていなかった新しいことをやる」必要があります。
そこで、補助金の審査上どのような内容であれば「新しいこと」と判断されるのか、気になる点かと思われます。

この点については、今回の採択事例が答えてくれています。
今回の採択事例を見るに、既にグリーンシーズン営業をやっていた会社が、
・別個の施設を新たに建設する
・「展示・見学型から、体験型へ」別の楽しみ方を提案する
等により、採択されている事例が見受けられます。
すなわち、従来の顧客・従来の提供価値とは異なるものを提供する旨の計画は、補助金の要件を満たすということです。

③申請事例がまだ少ない

今回第1回及び第2回の採択事例8社は、比較的規模や業容が大きい会社、すなわちスキー場を複数運営しているグループが多い印象です。

事業再構築補助金は費用・投資額の概ね2/3程度が補助されるものであり、残りの1/3程度は自己負担になります。
体力のない事業者は自己負担で投資を行うことは困難を伴うかもしれません。
また、事業計画を作成するためのリソースが不足しているということも考えられます(認定支援機関に丸投げしても実効性のある事業計画は完成しません)。

体力のないスキー場事業者であっても、是非補助金の活用が進むことを切に願っております。少子化で、暖冬で、コロナで苦しんでいるスキー場の皆様、この機会に復活への足がかりを模索して頂ければと思います。
私が力になれるのであれば是非お声がけ頂ければ幸いです。

以下で、採択事例を見ていきます。

(3)第1回公募での採択事例3社

それぞれ事業再構築補助金ホームページにて公開された採択事例より

①白馬岩岳マウンテンリゾート

【都道府県】長野県
【会社名】株式会社岩岳リゾート
【適用枠】通常枠
【事業計画名】白馬岩岳マウンテンリゾート 新分野展開を通じた通年化・多角化推進事業
【事業計画概要】冬期の索道収入を主な収入源としてきた当社だが、国内市場の縮小や小雪、新型コロナ等の影響により冬季収入が急減傾向であり、グリーン期の非索道収入の増強に取り組むべく、グリーン期のカフェやレンタル、アクティビティ等の新分野での事業展開を進めていく
【認定支援機関】株式会社八十二銀行

同社は日本スキー場開発株式会社のグループ会社です。
同社グループは現在9か所のスキー場を運営しています(1か所のアライアンスパートナー含む|同社ホームページより)。
白馬岩岳マウンテンリゾートでは、2018年秋に「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」という絶景テラスが完成して以後グリーンシーズンの事業に力を入れている印象です。今回事業再構築補助金を活用して更なるグリーンシーズンの成長を目指すようです。

②サンメドウズ清里スキー場

【都道府県】山梨県
【会社名】サンメドウズ清里株式会社
【適用枠】通常枠
【事業計画名】夏季アクティビティー「リュージュ」設置による新たな収益基盤の構築
【事業計画概要】冬季はスキー場を、夏季はレストランと山頂眺望を活かした観光リフトを営業。 現状、夏季はこの広大なスキー場施設のほとんどを利用できていないことから、飲食や景観以外に当施設で新たに滞在時間を楽しめるアクティビティーを展開し、新たな収益基盤となる事業を創出する。
【認定支援機関】株式会社商工組合中央金庫

同社はサンメドウズ清里スキー場を運営しています。
同スキー場はアルピナリゾーツというグループの中の1か所であり、アルピナリゾーツのスキー場は現在6か所あるようです(以上同スキー場ホームページより)。
同スキー場はグリーンシーズンは「清里テラス」という絶景テラスを2015年より運営しています。
今回は新たなグリーンシーズンアクティビティの導入の事業計画が採択されています。

③一里野スキー場

【都道府県】石川県
【会社名】山﨑商事株式会社
【適用枠】緊急事態宣言特別枠
【事業計画名】一里野スキー場におけるキャンプ場の開発・Beyond Ichirino
【事業計画概要】夏季の一里野スキー場への利用顧客を増やし、コロナ禍における地元経済の発展を図るための取り組みとして、当社としてはこれまで取り組んでいないキャンプ施設運営に挑戦する。
【認定支援機関】税理士法人畠経営グループ

一里野スキー場は、グリーンシーズンは山頂カフェやバーベキュー、ラジコンコースなどを運営していますが、今回キャンプ場運営の事業計画が採択されています。

(4)第2回公募での採択事例5社

それぞれ事業再構築補助金ホームページにて公開された採択事例より

①北志賀小丸山スキー場

【都道府県】長野県
【会社名】北志賀藤田観光株式会社
【適用枠】通常枠
【事業計画名】持てる経営資源を最大限に活用し高付加価値なオートキャンプ場の運営に取り組む
【事業計画概要】当社はホテル併設のスキー場を運営しており、コロナ禍において大打撃を受けている。当社の立地、敷地・建物、宿泊業ノウハウ等、すべての経営資源を活用しサウナ付き入浴施設が利用できるオートキャンプ場の運営に取り組み将来にわたって経営の安定を図る。
【認定支援機関】長野県信用組合

同社は北志賀小丸山スキー場を運営しています。
スキー場を活用してのグリーンシーズンの営業はこれまで行っていなかったようですが、今回キャンプ場運営の事業計画が採択されています。

②中部スノーアライアンス株式会社

【都道府県】岐阜県
【会社名】中部スノーアライアンス株式会社
【適用枠】通常枠
【事業計画名】スキー場オンリーからの脱却!ゲレンデを活かしたキャンプ&農業体験事業
【事業計画概要】冬のスキー場だけでなく、夏季シーズンも活かしたオールマウンテンリゾートを目指すもの。ゲレンデを活用しキャンプ場、農業、登山、真夏の雪遊びなど「ここにしかない新たな業態」への展開を行い新たな客層、売上を開拓する。
【認定支援機関】岐阜県商工会連合会

同社は岐阜県に3か所のスキー場を運営しています。
同社運営のスキー場ではこれまでもフラワーパーク等のグリーンシーズンの営業が行われていましたが、今回「新たな業態」の事業計画が採択されています。

③びわこ箱館山(旧 箱館山スキー場)

【都道府県】滋賀県
【会社名】株式会社箱館山
【適用枠】通常枠
【事業計画名】展示・見学型施設から、体験型アウトドアパークへの新分野展開
【事業計画概要】コロナの影響で当社のグリーンシーズンの課題が露呈した。ジップラインやアルプスアドベンチャーなど5つのアウトドアアクティビティで、琵琶湖の景観を楽しみながら「遊ぶ、体を動かす」施設を新たに展開し、グリーンシーズン中心の事業構成へ新分野展開を図る。
【認定支援機関】税理士法人T-GAIA

同社は、びわこ箱館山(旧 箱館山スキー場)を運営しています。
同スキー場はマックアースというグループの中の1か所であり、マックアースは現在スキー場を16か所運営しています(営業協力8か所含む|同スキー場ホームページより)。
同スキー場ではこれまでもフラワーパーク等のグリーンシーズンの営業が行われていましたが、従来の「展示・見学型」から「体験型」への新分野展開の事業計画が今回採択されています。

④石打丸山スキー場

【都道府県】滋賀県
【会社名】アルピナBI株式会社
【適用枠】通常枠
【事業計画名】魚沼ガーデン(マウンテンアウトドア体験施設)の建設
【事業計画概要】アルピナBI株式会社は石打丸山スキー場と、びわ湖バレイ(冬季スキー場、夏季ロープウェイ観光施設)の2施設を運営。現状、石打丸山において夏季は事業を行っておらず、未活用のスキー場を利用し夏季事業を展開することで新たな収益基盤を創出する。
【認定支援機関】株式会社商工組合中央金庫

アルピナBI株式会社は石打丸山スキー場と、びわ湖バレイの2施設を運営しています。
両スキー場はともにアルピナリゾーツというグループの中の1か所であり、アルピナリゾーツのスキー場は現在6か所あるようです(以上同スキー場ホームページより)。
びわ湖バレイは「びわこテラス」という絶景テラスを2016年より運営しています。
一方で石打丸山スキー場ではこれまでグリーンシーズンの事業を行ってこなかったところ、今回は新たなグリーンシーズンアクティビティの導入の事業計画が採択されています。

⑤株式会社MEリゾート但馬

【都道府県】兵庫県
【会社名】株式会社MEリゾート但馬
【適用枠】緊急事態宣言特別枠
【事業計画名】アウトドアで森林や湧水に囲まれたフィンランド式サウナ
【事業計画概要】新事業として、高原の森林と湧水の流れる小川を活用した「ログハウスのフィンランド式サウナ」を開始する。標高800メートルの高原で本格的なフィンランドサウナを提供し、お客様に究極の「整う」を体感していただく。
【認定支援機関】税理士法人T-GAIA

同社は兵庫県に3か所のスキー場を運営しています。
また、ゴルフ場やキャンプ場等、従来よりグリーンシーズンの事業も行っておりましたが、今回はフィンランド式サウナを開始する事業計画が採択されています。

(5)補助金額

採択された計画の補助金額については非公表です。
補助金額が気になる方は、本補助金制度上以下の点が定められていることは参考になるかと思います。

・通常枠の補助金額は、中小企業でMax6,000万円、中堅企業でMax8,000万円
・緊急事態宣言特別枠の補助金額は、Max1,500万円(従業員数に応じて異なる)
・補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関とともに作成が必要(→認定支援機関も金融機関が務めるのが自然かと考えられる)
→∴認定支援機関を金融機関が務めている案件は3,000万円以下の可能性が高い

なお認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関であり、本補助金は認定支援機関の確認をもらって作成することが規定されています。

そとCFO公認会計士 村瀬功

そとCFO公認会計士 村瀬功

日本で唯一のアウトドアビジネスに特化した社外CFO

1980年富山県生まれ、広島県育ち。東京大学経済学部卒。公認会計士・認定事業再生士。
社内にCFOが居ない中小・ベンチャー企業に対して社外の立場からCFO機能を担う、日本で唯一のアウトドアビジネス専門の社外CFO。
「豊かな自然の中での非日常体験は人生を豊かにする」と価値を信じ、アウトドアビジネスの健全な発展に寄与することが自らの使命と感じている。

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