アウトドアビジネスの土日祝日偏重リスク| 悩ましい「平日の売上獲得」

アウトドアレジャーを含め、レジャー産業においては、ユーザーの利用が土日祝日に偏重する傾向にあります。
日本においては長期間休暇を取る習慣が広がっておらず、限られた日にちにレジャーが集中してしまうという現状があります。

レジャー運営事業者としても、繁忙期と閑散期の両方ある中で繁忙期に合わせて設備を整えるために投資をしますし、繁忙期に対応できるような人員体制を整えます。そのため閑散期には設備も人員も空きが生じてしまうのです。
たとえば人件費については、アルバイト人件費は繁忙日の土日祝日にのみシフトに入ることで弾力的に対応が可能ですが、正社員は通年雇用になることから、平日の閑散日においては遊休となってしまいます。

繁閑の差をできる限り少なくすることが経営効率上重要になってきます。

(1)雇用調整助成金を活用して稼働の低い日に休業

 

上述したように曜日ごとの繁閑状況に応じて人件費をコントロールすることは重要な課題となります。
この人件費のコントロールの助けになっている制度として挙げられるのが雇用調整助成金です。

雇用調整助成金は、休業した従業員に対して給与を支払った場合に、一定額の助成金を受け取ることができる制度です。
制度自体は従前より存在していますが、2020年より、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の縮小を余儀なくされた場合の適用範囲や助成額の上限等が大きく緩和されました。
具体的な助成額は会社ごとに異なりますが、結果的に従業員に対して支払った給与額のうちの相当程度分を助成金として受け取っている会社が多くあります。

雇用調整助成金制度を利用すれば、稼働の少ない平日には従業員を休業させることで助成金を受け取ることが可能です。現状雇用調整助成金適用が緩和されている状況においては、土日祝日偏重リスクを低減している状況にあります。

当該制度は従業員の雇用維持を図るために従来より制度がありました。
それが新型コロナウイルス感染症の長期化に伴い、緩和措置も現在まで約2年に渡って継続してきました。
今後新型コロナウイルス感染症が収束した際には、この雇用調整助成金の制度も従前の取扱いに戻る可能性があります。
その場合は、「稼働が低い平日に従業員が休業し助成金を受け取る」ことによる土日祝日偏重リスク低減策が行えなくなる可能性がありますので注意が必要です。

(2)ワーケーションの広がりによる平日利用増加

 

①ワーケーションの広がりと可能性

 

昨今、新型コロナウイルスの影響により、経済全体が新しい働き方への大きな変革を迫られており、テレワーク等の柔軟な働き方のニーズが高まっています。
その中で、「新しい旅のスタイル」として注目を集めているのが、ワーケーションです。
その背景には、従来の日本の旅行スタイルの特徴が、特定の時期に一斉に休暇を取得することで旅行需要が特定の時期や特定の場所に集中することで混雑しやすいことが問題になっている点が挙げられます。

仕事と休暇を組み合わせた「ワーケーション」や「ブレジャー」が普及することは、働き方の多様化といった観点だけでなく、アウトドアレジャー業界含め観光産業にとっても、これまでの課題を解消し、「新たな旅のスタイル」として平日の利用が増えることで旅行需要の平準化や、長期滞在型のような新たな旅行機会の創出に貢献する効果的な手段のひとつとして、大きな期待をしています。

観光庁の定義によると、

ワーケーションとは…
Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語。テレワーク等を活用し、普段の職場や自宅とは異なる場所で仕事をしつつ、自分の時間も過ごすこと。

ブレジャーとは…
Business(ビジネス)とLeisure(レジャー)を組み合わせた造語。出張等の機会を活用し、出張先等で滞在を延長するなどして余暇を楽しむこと。

ワーケーションとブレジャー

(出典:観光庁ホームページ)

観光庁が行った企業と従業員の両者を対象としたワーケーションに対する意識調査によると、ワーケーションの認知度が約8割に達しているという結果でした。
類型別にみると「有給休暇を利用しリゾートや観光地の旅行中に一部の時間を利用してテレワークを行う」という休暇型ワーケーションについての認知度が約50%と高く、また「場所を変え、職場のメンバーと議論を交わす」という合宿型ワーケーションについても35%となるなど、多様なワーケーションの実施形態についての理解が高まっていることがうかがえます。

②企業にとってのワーケーション

 

企業にとってワーケーション導入理由は、「従業員の心身のリフレッシュによる仕事の品質と効率の向上」「多様な働く環境の提供」の2つが最も大きいことがわかりました。さらに「優秀な人材の雇用確保」「優秀な新卒社員や若手社員の採用および定着率の向上」や「自己成長および会社への貢献」を目的や期待に挙げる企業が多数みられます。
福利厚生の観点から従業員のリフレッシュ効果に期待する声が多い一方、さらに一歩進んだ戦略的な人材マネジメントや新規ビジネス開発、地域課題解決などといった、自社のビジネスに活かす取り組みに発展させ、ワーケーションを経営戦略の一部とする考えを持っている企業が少なくないことがこの結果を通してうかがえます。

企業のワーケーションの導入の目的と期待

(出典:観光庁ホームページ)

③従業員にとってのワーケーション

 

従業員にとっては、働き方の選択肢が増加すれば、自立的で自由度の高い働き方を選択でき、仕事とプライベートの両立が実現可能となります。
また有給休暇を取得しやすくなれば観光のハイシーズンを避けてワーケーションを行うことができ、特定の時期に旅行需要が集中するといった課題も解消し、また旅費や時間の節約にもなるといった利点もあります。
何よりも非日常の土地で仕事を行うことで心身がリフレッシュされモチベーションが向上し、充実した余暇を過ごしながら新たなイノベーションを生み出す力が養われることが期待できます。より良いワーク&ライフスタイルを実現することは生産性向上にも繋がる可能性があります。

働く人はワーケーションについてどのように認識しているのか、「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査意識調査」(内閣府)によると、ワーケーションを実施したいと回答した者は34.3%であり、年齢階級別では、20歳代が47.5%、30歳代が43.3%と高くなっています

ワーケーションの実施希望

(出典:内閣府ホームページ)

また、ビッグローブ株式会社による「ニューノーマルの働き方に関する調査」で「新しい働き方として政府が提唱するワーケーションをしてみたいか」とたずねところ、「そう思う」が23.7%、「ややそう思う」が35.3%と6割近い人が関心を示し、年齢階級別では20代、30代が高く、いわゆるデジタルネイティブ世代においてワーケーションへの関心が高いことが伺えます。

ワーケーションをしてみたいと思うか

(出典:ビッグローブ株式会社「ニューノーマルの働き方に関する調査」)

同調査によれば、ワーケーションを実施する上での条件として、
・「会社がワーケーションを推奨する(制度が整う)」(43.5%)
・「有給休暇を使わず通常勤務扱いになる」(39.0%)
・「会社の費用負担がある」(39.0%)
等が挙げられ、会社側のサポートがあれば、ワーケーションをしてみたいと考えている人が相当数いるとみられます。

今後、ワーケーションの普及に向けて、企業におけるワーケーション制度の整備が進むことを期待します。

どのような条件が整えばワーケーションをしてみたいか

(出典:ビッグローブ株式会社「ニューノーマルの働き方に関する調査」)

 

(3)ソロキャンプ ~平日利用の多いソロキャンパー

 

近年ブームとなっているキャンプの中でも、2020年の新語・流行語対象のトップ10にランクインするなど、特に注目を浴びているのが「ソロキャンプ」です。
ソロキャンプの広がりが、キャンプ場の平日利用を促進していると言えます。

オートキャンプ白書2021によると、どのような人が平日にキャンプ場をよく利用するかを調査すると、「ソロキャンパー」が74.6%(2019年67.1%、2018年56.3%)でダントツでした。仕事をリタイアしている方も多いであろう「シニア」38.6%の2倍近い数字です。

平日によく利用する人


(出典:オートキャンプ白書2021)

平日利用を増やすことが、キャンプ場の運営を向上させるための有効な手段と考えられます。
キャンプ場もまた、他のアウトドアレジャーと同様に休日と平日との繁閑の差が激しいビジネスです。オートキャンプ白書2021によると年間の稼働率が16.3%ですが、これは年間を平均した数字です。休日と平日の稼働率はそれぞれ、休日が70~80%、平日が5%ぐらいと思われます。休日は予約が取れないほど混雑している一方で平日はガラガラな状態なのです。
現状平日のキャンプ場稼働率が5%程度だとすると、これを例えば10%~15%程度にでも引き上げることができればキャンプ場の損益としては大きく改善することになります。

オートキャンプ白書2021の「キャンパー傾向調査」においても、「平日の利用者が増えた」という回答は3番目に多い結果となり、キャンプ場の平日利用が増えているということは、キャンプ場事業者にとってもよい傾向と考えられます。

キャンパーの傾向


(出典:オートキャンプ白書2021)

 

(4)林間学校やスキー旅行 ~学校教育での利用

学校教育での利用を増やすことが平日利用を増やすことに繋がると考えます。

林間学校においては、キャンプやアウトドアアクティビティの稼働を上げることに寄与します。また、日帰りのスキー学校や宿泊型スキー旅行においては、スキー場の稼働を上げることに寄与します。

学校教育における利用が増加することは、事業者側としては、一時の売上増加につながることに加え、アウトドアレジャー/アクティビティをより身近に感じてもらうことで、将来に渡って長くアウトドアレジャー/アクティビティ業界を支えるユーザーとなってもらえるという効果もあります。

独立行政法人国立青少年教育振興機構が2019年3月に発行した「小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査」によると、以下の報告がされています。
宿泊を伴い自然体験や生活体験などの体験活動を行う「集団宿泊活動」は、人間関係の形成や集団活動に関する多くの事柄について成果がある旨、小学校及び中学校の教員が回答しています。
自然豊かな非日常的な場での寝食を共にした生活で、普段知らない仲間の一面を知ったり、普段見せない自分の一面を仲間に見せたりすることにより理屈ではない肌感覚の人間関係を築いていく、といった高い成果につながっています。

学習指導要領上、自然の中での集団宿泊活動か修学旅行かどちらかを実施すればよいことになっていますが、自然の中での集団宿泊活動と修学旅行とでは目的や内容が異なります。人間関係の形成や社会参画に関する資質・能力を育む集団宿泊活動を、小学校及び中学校で必須とすることの検討が必要であると提言されています。

集団宿泊活動の実施日数については、平成20年の文部科学省による答申によると、
「集団宿泊活動は一定期間(例えば1週間(5日間)程度)にわたって行うことが望まれる」と提示し、長期間での実施を推奨しています。
この点、本調査は、一定期間で実施した場合、学校の指導・引率体制を整えることや保護者の理解を得ることへの不安が高くなる結果を示しています。
集団宿泊活動を一定期間(1 週間程度)実施するためには、教員や学校の努力や工夫だけでは困難であり、国や自治体が教育施策とし、経費の補助、指導者や引率者の手配などを行う等の継続的な支援が必要と考えられます。

そとCFO公認会計士 村瀬功

そとCFO公認会計士 村瀬功

日本で唯一のアウトドアビジネスに特化した社外CFO

1980年富山県生まれ、広島県育ち。東京大学経済学部卒。公認会計士・認定事業再生士。経営革新等支援機関。
社内にCFOが居ない中小・ベンチャー企業に対して社外の立場からCFO機能を担う、日本で唯一のアウトドアビジネス専門の社外CFO。
「豊かな自然の中での非日常体験は人生を豊かにする」と価値を信じ、アウトドアビジネスの健全な発展に寄与することが自らの使命と感じている。

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