レジャー白書2021から見るアウトドアレジャーの展望

2020年の国内レジャー市場を分析した「レジャー白書2021」が2021年10月4日に発刊されました。

2020年の国内レジャーは新型コロナウィルスの影響を受け、多くの種目が参加人口や市場規模を大きく縮小する結果となっています。

その中でアウトドアレジャーは、密を避けたレジャーであることもあり、比較的コロナの影響が軽微であり”善戦している”とも言えます。

では、コロナが収束した後のアウトドアレジャーの展望はどうでしょうか。
アフターコロナ・ウィズコロナの時代においてアウトドアレジャーが”選ばれる”ためには何が必要なのかを考察します。

 

(1)レジャーの現状

以下レジャー白書2021より。

①2020年レジャー参加人口

2020年はコロナ禍の影響により、外出や移動を伴う活動への参加が大きく減少しました。
2019年まで1位だった「国内観光旅行」は約37.2%減少し4位、同2位だった「外食」は約23.4%減少し6位でした。

一方、自宅や身近な場所でできる活動や非対面・非接触でできる活動などが注目されました。
2020年の上位種目は、1位が「動画鑑賞」、2位が「読書」、3位が「音楽鑑賞」でした。「動画鑑賞」は前年比11.1%増加しています。

【図表①】参加人口上位40種目(2019年~2020年)

(出典:レジャー白書2021)

②2020年レジャー市場規模


2020年の余暇市場は55兆2,040億円となり、前年から23.7%減少しました。

2019年までは市場規模72兆円前後で堅調に推移していましたが、2020年はコロナ禍の影響を大きく受けた結果となりました。
同時期の国内総生産は前年比20.7%減少、民間最終消費支出は前年比19.1%減少ですので、それらと比較して余暇市場はより大きい落ち込みでした。

【図表②】余暇市場、国民総支出、民間最終消費支出の推移

(出典:レジャー白書2021)

③主なアウトドアレジャー参加人口

【図表③】参加人口の推移(単位:万人)

(出典:レジャー白書2021)

ゴルフ(コース)

2020年3月から6月の期間は、緊急事態宣言による外出自粛により来場者を大きく落としましたが、その後は前年同等程度かそれ以上の水準で推移しています。コロナ禍においては三密でないレジャーとしてゴルフが注目されています。
近年は、キャディや昼食をつけない安価なプレースタイルや割安なインターネット予約の導入が広がったことにより、低価格化が進んでいました。2020年コロナ禍においては、昼食をつけないスループレーが広がりをみせ、低価格化が一層進行しました。

スキー・スノーボード

2019-2020シーズンは深刻な暖冬少雪に見舞われ、多くのスキー場で営業コース・営業日数が限定されることにより、来場者数の減少に苦しみました。
2020-2021シーズンは積雪に恵まれて営業コース・営業日数の面ではコンディションのよいシーズンでありました。一方でコロナ禍の影響を受け、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言の発令により都道府県をまたぐ移動が制限されました。スキー学校や修学旅行という団体での利用も大きく減少し、さらに近年増加傾向にあったインバウンド顧客についてはほぼ消失し、大きく来場者が減少しました。

オートキャンプ

近年のアウトドアブームによりキャンプ市場は堅調に推移していましたが、3月から6月の期間は緊急事態宣言による外出自粛により来場者を大きく落としました。その後夏以降の復調がありながらも年間ではマイナスとなりました。コロナ禍において三密でないレジャーとして注目され、近年のアウトドアブームにコロナ禍が追い風になっています。

 

(2)アフターコロナのアウトドアレジャー展望


アフターコロナ・ウィズコロナの時代のレジャーは、ビフォーコロナの時代に戻るのか、別の展開を見せるのか。新しい時代に求められるレジャーとはどのようなものでしょうか。
その中でアウトドアレジャーはどのような存在になっていくのでしょうか。

それを考えるのに、消費者がレジャーに対して何を求めているかを追究するため、レジャー白書にて毎年調査・報告されている「潜在需要」から考えてみます。

①潜在需要に注目

「潜在需要」とは、「希望率」と「参加率」の差で表されます。
希望率とは、あるレジャー種目を「その活動を今後も続けたいor将来やってみたい」人の割合、
参加率とは、あるレジャー種目を「2020年に1回以上行った」人の割合、
です。

すなわち、潜在需要とは、そのレジャー種目を年1回以上行うことについての、「やりたい人」と「やった人」の乖離であり、数字が大きいほど「やりたいのにやっていない」ことを示します。

潜在需要上位10種目は以下の通りです。傾向マーカーで塗った種目はアウトドアレジャーです。

はじめに2020年。

【図表④】潜在需要上位10種目(2020年)(単位:%)

(出典:レジャー白書2021)

続いて比較対象として2019年。

【図表⑤】潜在需要上位10種目(2019年)(単位:%)

(出典:レジャー白書2020)

上位10種目について2020年の前年比較は以下の通りです。

【図表⑥】潜在需要上位10種目の前年比較(単位:%)

(出典:レジャー白書2021、レジャー白書2020)

「国内観光旅行」「海外旅行」については、コロナ禍で移動制限が課せられたことにより、参加率が低下し潜在需要の増加につながっていると考えられます。
「動物園、植物園、水族館、博物館」「遊園地」「音楽会、コンサートなど」については、屋内施設を中心にコロナ感染対策に懸念が残るため参加率が低下し潜在需要が増加していると推測します。

これをふまえて今後の展望ですが、これらコロナ禍によって潜在需要が増加した種目について、コロナが収束した場合の参加率はどうなるでしょうか?

コロナが収束し、移動制限が解消され、感染の懸念が低下した場合には、これらの種目は参加率が高くなると考えられます。結果として瞬間的にはアウトドアレジャーから他のレジャーへ顧客が流れると予想されます。

ここでアウトドアレジャーにとって重要なのは、中長期的に参加率が上がるのか下がるのかです。コロナ禍の前よりも参加率が上がるのか、コロナ禍前に戻るのか、それともコロナ禍よりも下がってしまうのか。
コロナ禍の前の水準かそれ以上の参加率となるためには、中長期的に選ばれるレジャーとなることが重要と考えます。

ではアウトドアレジャーが選ばれるためには、どのように考えればよいのでしょうか。

アウトドアレジャーをが選ばれるためには、逆に選ばれない理由を考えてみます。
そこで、アウトドアレジャーをやらない理由を挙げてみましょう。

・お金がかかる
・時間がかかる
・労力がかかる(車の運転etc)
・体力が要る
・コロナが心配
etc

といった点が思いつきました。他にもいくつも挙がると思います。
アウトドアレジャーが選ばれるためには、上記の”やらない”理由に対して対応し、不満を解消してていくという観点が考えてみてはいかがでしょうか。
その際に、図表④⑤よりレジャーの好みは性別や年齢によって大きく異なることが明らかですので、性別や年齢ごとにターゲットを明確にした施策を講じることが重要と考えます。

以下でターゲットごとの「”やらない理由”への対応」策を考えてみます。

②1泊or2泊の休暇でのレジャー

対応するべき”やらない理由”:「時間がかかる」「労力がかかる」

アウトドアレジャーは豊かな自然のもとで楽しむことが多く、都市部在住の方が楽しむためにはアクセスに時間がかかることが多いと考えられます。
1日がかりか、または宿泊を伴う外出により楽しむことが多い、またはオススメな楽しみ方というケースが多いかと思います。

日本人は長期の休暇をとることが少ないと言われています。年次有給休暇の取得率は近年上昇傾向にある点は喜ばしいことではありますが。
長期の休暇をとることができないことを理由に国内や海外へ旅行へ行きたくても行けない人が多いのではないでしょうか。

コロナ禍においては遠くへ移動することが控えられていますが、行動制限が緩和されることにより国内・海外旅行の参加率が戻ると予想されます。

図表④⑤の潜在需要のランキングを見るに国内&海外観光旅行が突出して比率が高いです。
数日間の休日がとれる方は国内&海外観光旅行を選ぶケースが多いと考えます。

アウトドアレジャーは、どちらかというと1泊or2泊の休暇の過ごし方において価値を提供するという、ターゲティングをするのがよいのではないでしょうか。

数時間     → 家や近場
半日~1・2泊 → アウトドアレジャーはココ
数泊      → 国内・海外旅行

 

③女性の潜在需要を上げる

対応するべき”やらない理由”:「体力が要る」

2020年及び2019年の潜在需要(図表④⑤)を見るに、女性によるアウトドア種目の選択が少ないことが目立ちます。「バーベキュー」や「ピクニック、ハイキング、野外散歩」といった比較的手軽なものはランキングに入っていますが、体力が要る種目はランキングに入っていません。

そこで、女性をターゲットにして、体力に自信がなくても大丈夫なレジャーを提案してはどうでしょうか。

ファミリーで楽しみやすいレジャーを提供する視点はよいと考えます。子どもの遊びや教育の観点からもアウトドアレジャーは適していると言えます。
ファミリーであれば男性が同行するケースも多いと思われ、体力が要ることは同行する男性にお願いすることで女性の満足度は向上することは望めないでしょうか。
潜在需要上位10種目のうち、女性で「オートキャンプ」がランクインしているのは10代・40代です(図表④⑤)。ファミリーでキャンプを楽しむスタイルを提案することで10代・40代女性のオートキャンプの潜在需要を満たせるのではないでしょうか。

「バーベキュー」や、「ピクニック、ハイキング、野外散歩」は女性の潜在需要が高い、比較的カジュアルなアウトドアです。
例えば、

日中:「ピクニック、ハイキング、野外散歩」
食事:「バーベキュー」
宿泊:「オートキャンプ」

といった組み合わせでアウトドアレジャーを提供することで、女性の潜在需要を満たすことができます。

上記の観点からは、昨今人気が高まっているグランピングは女性の潜在需要を満たしていると言えます。
また、SNS映えする点でも、オシャレで写真映えすることは女性の満足度を控除させるためには重要です。この点でもグランピングはマッチしていると考えられます。

④男性向けレジャー

対応するべき”やらない理由”:「お金がかかる」「労力がかかる」

2020年及び2019年の潜在需要(図表④⑤)からは、男性のいくつかの世代においては、登山・釣り・スキースノーボードのランクインが見受けられます。

スキー・スノーボード・登山・ダイビングは若年男性層に人気が高いといえます。
これらの種目は比較的体力を要するレジャーなので、若年男性層にフィットする面があります。
一方で、これらのレジャーは道具を揃えたり利用料金のためにお金がかかるイメージがあるのではないでしょうか。また、昨今は都市部の住人の車所有が減っており、都市部から車を持たずに移動することについて壁を感じるかもしれません。
特に若年層は可処分所得が比較的低いため、金銭的なハードルをどのように下げてあげられるかを考えるのがよいでしょう。

お金の面では、
例えば、スキー・スノーボードでは、「雪マジ!」という、全国約160施設で19歳(年齢はシーズンによって変動あり)は無料で利用できるという企画が行われています。
同じくゴルフでは、「ゴルマジ!」という、全国約50施設で21歳~22歳(年齢はシーズンによって変動あり)は無料で利用できるという企画が行われています。
お金に不安を抱える若年層にとって敷居を低くすることで誘客を増やすことができ、また若いうちにこれらのレジャー種目に親しむことにより生涯を通して長く参加してもらいリピートにつなげることができるというメリットもあります。

足の面では、車を所有しない方のためには、

・電車プランやバスプラン等の商品を企画する
・施設から送迎を行う
・レンタカープランの提供する

などが考えられるでしょう。

(3)まとめ



コロナが収束すると、コロナ禍において控えられていたレジャーの人気が復活するでしょう。
今後もアウトドアレジャーが元気でいるためには、性別や年齢ごとにターゲットを明確にし、ターゲットごとの「”やらない理由”への対応」施策を講じることが重要と考えます。

 

そとCFO公認会計士 村瀬功

そとCFO公認会計士 村瀬功

日本で唯一のアウトドアビジネスに特化した社外CFO

1980年富山県生まれ、広島県育ち。東京大学経済学部卒。公認会計士・認定事業再生士。
社内にCFOが居ない中小・ベンチャー企業に対して社外の立場からCFO機能を担う、日本で唯一のアウトドアビジネス専門の社外CFO。
「豊かな自然の中での非日常体験は人生を豊かにする」と価値を信じ、アウトドアビジネスの健全な発展に寄与することが自らの使命と感じている。

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