アウトドアビジネスの季節変動リスク| グリーンシーズンとウィンターシーズンという“季節性”

アウトドアビジネスは季節性があります。

キャンプやゴルフといったレジャーは主にグリーンシーズンにおいて楽しまれるものであるため、これらのレジャーに関わるビジネスもまた、主に夏季において売上を計上します。

一方でスキーやスノーボードといったレジャーは主にウィンターシーズンにおいて楽しまれるものであるため、これらのレジャーに関わるビジネスもまた、主に冬季において売上を計上します。

(1)㈱スノーピーク(キャンプ用品メーカー)の事例

アウトドアビジネス上場企業による「事業等のリスク」記載から、季節変動リスクについて考察します。
まずはキャンプ用品メーカーの㈱スノーピークです。

季節変動の影響について
当社グループの主な製品はオートキャンプ用品である為、春から秋にかけて売上が増加する傾向にあり、冬期にあたる第1四半期は売上が減少する傾向にあります。当社グループでは引き続き第1四半期においても売上を確保すべく努力してまいりますが、特定の四半期業績のみによって通期の業績見通しを判断することは困難であります。
(出典:㈱スノーピーク2020年12月期有価証券報告書)

同社の売上高の各四半期に占める割合の推移をグラフにすると以下の通りです。

四半期ごとの売上高が通期売上高に占める割合の推移

(出典:有価証券報告書、四半期報告書より集計)

第1四半期(1月~3月)は冬季であるため、他の四半期に比較して売上高が上がらない傾向にあります。
「第1四半期時点では通期の売上高と比較して小さい割合でしか売上高が計上されないがそれをもって通期の業績見通しを判断することは難しい」旨、2020年12月期の有価証券報告書上で説明しています。

第1四半期(1月~3月)の売上高の占める割合は継続して低い水準ですが、それ以外の3四半期については、季節変動が小さくなっているように見えます。
2020年の4~6月は緊急事態宣言による外出自粛という特殊要因があったことを考慮するものの、傾向として第2四半期(4~6月)の割合が低下傾向にあり、第4四半期(10~12月)の割合が上昇傾向にあります。
キャンプユーザーの購買活動が冬季においても活発化しているという最近の傾向が伺えます。

そのような状況も考慮されたのでしょうか、上述の「季節変動の影響について」というリスク情報の記載は2020年12月期まで記載されていたものの、最新の2021年12月期の有価証券報告書には記載されていません。

(2)日本スキー場開発㈱(スキー場運営)の事例

続いて、スキー場運営会社である日本スキー場開発㈱の事例です。

業績の季節変動について
当社グループの業績は、スキー場のウィンターシーズンの営業を開始してから終了するまでの、通常11月から翌年4月にかけて、第2四半期と第3四半期に偏重する傾向にあります。
当社グループといたしましては、上記の繁忙期の営業強化を一層進めるとともに上記の繁忙期以外の時期における、例えば、山頂からの雲海を望む展望テラスの建設、大型遊具施設の導入など、グリーンシーズンの事業の強化に向けて、お客様の需要拡大を一層推進してまいる方針であります。
(出典:日本スキー場開発㈱2021年7月期有価証券報告書)

同社はスキー場運営会社であるため、ウィンターシーズンである12月~3月頃に売上高が偏重します。

ウィンターシーズンである第2・3四半期(11月~4月)とグリーンシーズンである第1・第4四半期(5月~10月)の売上高の推移は以下の通りです。

第2・第3四半期売上高(11月~4月)と第1・第4四半期売上高(5月~10月)の推移

(出典:有価証券報告書より集計)

2016年7月期においては第1・第4四半期の売上高は1,097百万円だったところ、コロナ禍前の2019年7月期においては1,466百万円となり、2016年7月期比で134%の水準まで増加させています。
同社グループは、山頂の景色や雲海を楽しむテラスやアクティビティを充実させる等の施策を積極的に行っており、その効果が現れているものと見受けられます。

(3)スキー場運営事業者による季節変動を抑える取り組み

日本における多くのスキー場はこれまで、メインの営業であるウィンターシーズンにおいていかに集客して売上を計上するかを考えてきました。

スキー場は運営にあたり、建物やリフト・ゴンドラ、降雪機、圧雪車等、多くの設備を要する、設備産業としての性格を持っています。
ビジネスとして成り立つためにはそれらの装置の投資に見合うだけの集客が必要なのです。
過去のスキーブームの時代においては、ウィンターシーズンの集客のみによってスキー場設備の投資回収を行うことは可能だったかもしれません。

しかしながらスキー・スノーボード人口は今やピーク時の4分の1まで落ち込んでいます。
ウィンターシーズンの売上のみでは投資回収や利益の計上が難しくなって来ている時代と言えます。
ウィンターシーズンに頼るのみではなく、グリーンシーズンでも稼ぎ、年間を通して集客することで季節変動を抑え、安定した売上を獲得する仕組みを構築することが、以前に増して重要となってきていると言えます。

近年、多くのスキー場運営事業者において、サマーシーズンの売上獲得の取り組みが活発化しています。
上述したように、日本スキー場開発㈱のようにテラスやアクティビティを設置してグリーンシーズンのリゾートとして運営するのが一例です。
また近年はキャンプの人気が高まっていることを背景に、スキー場がキャンプ事業に参入するケースが増えています。スキー場では、比較的平坦な場所をキャンプサイトとして利用することが可能です。建物内にトイレやシャワー施設を有していることも多いことから、スキー場がキャンプ場に参入する際には比較的定額の投資で始めることが可能です。
ウィンターシーズンはスキー場として、グリーンシーズンはキャンプ場として、営業することで、年間を通して売上を獲得することができます。

(4)季節変動による資金繰りがタイトで悩ましい

アウトドアビジネスにおいては季節性が大きいことをお伝えしましたが、売上の季節変動が大きくなることにより悩みの種になるものとして、「資金繰りがタイトになる」点が挙げられます。

年間の資金残高の推移を見るに、繁忙期には顧客への売上による収入が増えることで資金残高が増加します。

その後繁忙期から閑散期に移行すると、収入は減少します。一方で、繁忙期に向けて設備の更新・修繕を行ったり、顧客への販売促進や、スタッフ(主にアルバイト)の確保など、準備のための活動に支出が増加し、資金残高が減少します。
次に繁忙期を迎えるまでの間は資金繰りがタイトになります。

このように、繁忙期と閑散期とでは収入・支出の多寡に波があり、年間を通して資金残高が大きく増減する傾向にあります。

豊富に資金を保有しているような大企業は資金残高の増減が生じても心配はないかもしれません。
また、必要に応じて資金調達が可能な信用力の高い企業についても、資金残高が少なくなった際には機動的に資金調達を行うことで円滑な資金繰りが可能と考えられます。

一方で、資金を豊富に有しておらず、かつ信用力が低くて資金調達の難易度が高い中小企業も多く存在します。
そのような企業については、資金の変動を適切に管理するとともに、資金調達を計画的かつ戦略的に行う取り組みが重要となります。

閑散期には、新たな売上を創ることにより収益を獲得していく取り組みが重要となる一方で、支出を減らす取り組みとしてコスト削減取り組み等の財務施策も重要な課題となります。

そとCFO公認会計士 村瀬功

そとCFO公認会計士 村瀬功

日本で唯一のアウトドアビジネスに特化した社外CFO

1980年富山県生まれ、広島県育ち。東京大学経済学部卒。公認会計士・認定事業再生士。経営革新等支援機関。
社内にCFOが居ない中小・ベンチャー企業に対して社外の立場からCFO機能を担う、日本で唯一のアウトドアビジネス専門の社外CFO。
「豊かな自然の中での非日常体験は人生を豊かにする」と価値を信じ、アウトドアビジネスの健全な発展に寄与することが自らの使命と感じている。

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